武生国際音楽祭 1日目(9/11)と2日目(9/12)

 毎年9月に越前市で開かれている「武生国際音楽祭」、今年はコロナ禍を踏まえて(他の夏の音楽祭同様)例年と異なる形態での開催を余儀なくされました。若手作曲家の新作を紹介する「新しい地平」シリーズなどの企画コンサート、そして作曲ワークショップやマスタークラスが無くなり、アウトリーチも控えめ。コンサート参加アーティストもソリスト6名と、ことしは例年と比較して小規模なフェスティバルとなりました。それでも開催したことに音楽祭関係者たちの熱意を感じ、今年も越前市文化センターに足を運ぶことにしました。
 感染対策は行き届いてましたね。観客はアルコールでの手の消毒とサーモグラフィによる検温ののち入場、チケットは客みずから半券をもぎって箱に入れる、というスタイルでした。トイレの入退場の際にはスタッフからアルコール消毒を促されます。あと足で踏むと消毒液が出る仕組みになってるデバイスがロビーに置いてありましたが、作りがDIYっぽいというか、ニ○リかコ○リかどこかのホームセンターから部品を調達して仕立てた感じがして、ついマジマジと眺めてしまいましいた。あと音楽監督細川俊夫氏を含め、出演者全員が事前にPCR検査を受けた(そして結果はすべて陰性。これ肝心)ことを音楽監督自ら挨拶されたときに仰ってました。うーん欧州レベル。そしてホール内は間隔を詰めて座ることがないように多くのイスに布切れを被せていました。それでも何となくの雑感ですが、例年の音楽祭よりお客さんは入っているような気がしました。今年は地元の方々の関心がすごく高かったのでは、と推察。
 コンサートの演奏について。1日目(9/11)と2日目(9/12)のプログラムは異なるものの、どちらも古典と20世紀作品がミックスされた武生ではお馴染みのプログラムビルディングでした。このプログラムの組み方ってシェーンベルクたちが約100年前に立ち上げた「私的演奏協会」っぽいなあ、、、そういえば今年はその演奏会のためにアレンジされた室内楽版のマーラー4番をベルリンフィルがネット中継してたなあ、、、あれは感動したなあ、、、などとぼんやり考えながらソリストたちの演奏に耳を傾けておりました。
 ヴァイオリニストの山根一仁毛利文香チェリスト岡本侑也水野優也、そしてピアニストの北村朋幹と、5人の演奏家たちがときにソロで、ときにはデュオで出演してましたが、1曲づつ奏者が入れ替わり立ち代わりして演奏するので、山根さんと毛利さんの(姿勢を含めた)弾き方の違い、岡本さんと水野さんの(楽器を含めた)音の違いなどをダイレクトに感じることが出来て、そこが面白かったですね。毛利さん、ベートーヴェンソナタ「作品30の2」をあまりに情熱的に演奏されてて圧倒されたのですが、パンフレットを見るとミハエラ・マルティンに師事されているとか。なるほど、と納得してしまいました。岡本さんと北村さんのベートーヴェン「作品102の1」は、作曲家後期の内省的な作風を見事に捉えていて、とても満足。山根さんは1日目のバッハBWV1004と2日目のベリオ「セクエンツァⅧ」、どちらもクールな中に熱いものを感じさせるパフォーマンスで見事でした。そして水野さんとのラヴェルのデュオ。あの曲はいつ聴いても「何コレ!?」と唖然とする異形の名曲なのですが、昨日の演奏もまさにソレでした。スパークするような音や、かするような音も交え、いろんな音がとっ絡まってできる音楽。2人の奏者は音楽的に絡んでいるのか、絡んでいないのか。居所を求めて音が彷徨ってるかのような、そんな様子を眺めているうちに曲が終わってしまった。そんな感じ。面白かった。
 そして最後に。2日目にベートーヴェンを2曲演奏した伊藤恵さんが、休憩後にマイクを持って挨拶されたときの言葉。「武生に来れて本当に良かった!」という一言に感動いたしました。

 

(Program Note 1)

The 31st Takefu International Music Festival

Venue: Echizen City Cultural Centre

Date: September 11, 2020

Violin: Kazuhito Yamane*1 Fumika Mohri*2

Piano: Tomoki Kitamura*3

Cello: Yuya Mizuno*4 Yuya Okamoto*5

1. J.S. Bach: Cello Suite No.1 in G Major BWV1007 *4

2. Toshio Hosokawa: Melodia Ⅱ*3

3. J.S. Bach: Partita for Violin No.2 in D minor BWV1004 *1

4. J.S. Bach: Violin Sonata No.3 in C Major BWV1005 *2

5. Toshio Hosokawa: Etude Ⅳ/Ⅴ/Ⅵ *3

6. J.S. Bach: Cello Suite No.5 in c minor BWV1011 *5

(Program Note 2)

The 31st Takefu International Music Festival

Venue: Echizen City Cultural Centre

Date: September 12, 2020

Piano: Kei Itoh*1 Tomoki Kitamura*2

Violin: Kazuhito Yamane*3 Fumika Mohri*4

Cello: Yuya Okamoto*5 Yuya Mizuno*6 

1. Beethoven: Für Elise WoO 59 *1

2. Beethoven: Piano Sonata No.14 in c-sharp minor Op.27-2 *1 

3. Luciano Berio: Sequenza Ⅷ *3

4. Beethoven: Violin Sonata No.7 in c minor Op.30-2 *2 *4

5. Toshio Hosokawa: Small Chant *5

6. Beethoven: Cello Sonata No.4 in C Major Op.102-1 *2 *5

7. Webern: Four Pieces for violin and piano Op.7 *2 *4

8. Ravel: Sonata for Violin and Cello *3 *6